「パイオニア・ガール」には、大きな森で山火事が起きる話があります。森の中から数発の銃砲を聞いたとうさんは誰かが迷ったのを察知して、 銃を空に向かって撃ち、 迷子になった人に 居場所を知らせました。
開拓時代には110番も119番もなかったけれども、 緊急時には隣人が駆けつけて助け合いました。
アルマンゾの家では昼ごはんの合図にラッパを使っていましたが、 開拓時代によく活躍したのはディナーベルと呼ばれる三角形のベルです。 音楽の時間に使うようなトライアングルを大きくしたようなもので、 昼食の合図に使われました。 でも、 緊急時には119番に早変わり。 繰り返し鳴らすと、異変に気づいた人たちが駆けつけてくれたのです。 いわば、 開拓時代の携帯電話です。 ローラたちが学校でノート代りに使っていた石板にしても、 今でいうならiPadです。 デジタルではないだけで時代が違っても、 基本的な機能は同じですね。
「はじめの四年間」にはローラたちの家が火事になった話があります。火事の原因は描かれていませんが、 後年、ワイルダーの娘のレインは、自分がわらをくべようとしたのが原因だと述べていて、 アメリカの研究者もそれを言葉どおりに受け取っています。
でも、本当でしょうか? 開拓記念館で十九世紀の料理用ストーブを使っている私の経験からいうと、それを言葉どおりに受けるのは、無理があります。当時の料理用ストーブは、バーナーだけでなく、ストーブ全体が発熱しますから、幼児の事故も多かったのです。 だから、 たった二~三歳の子供がわらをくべようとしたら、 常識のある親なら絶対にやらせないはずです。 ストーブでなくても、幼い子供に火を扱わせたりしません。レインがくべたわらが原因というのは、 本人の思い違いではないでしょうか?
むしろ、ストーブのそばに置いてあったわらから出火したのではないかと思います。ストーブの隙間から火の粉が飛び出してくることがありますから。