2015年1月31日土曜日

PGH マーサおばさんといとこたち

「パイオニア・ガール」では、インガルスがペピンに暮らしていたとき、マーサおばさんの家に遊びに行くエピソードがあります。マーサはキャロライン・インガルスの姉で、二歳年上でした。

マーサは十四人の子どもがいましたが、「パイオニア・ガール」に登場するのはその半分です。ローラたちが家につくと、幼いいとこと双子の赤ん坊の三人だけで、あとは皆、学校に行っていました。その学校は、彼ら以外、スウェーデンの子どもたちばかりで、いとこたちはスウェーデン語も英語も出来たそうです。(ペピンの近くにストックホルムという町があるように、あの辺りはスウェーデンの移民が多かった)。

食事に戻って来たいとこたちと、お昼を食べ終えると、ローラとメアリも一緒に学校に行きました。校庭では、男の子も女の子も雪合戦をやっていて、ローラも加わります。そのときのエピソードはローラの性格をよく表わしています。

ガスという男の子がローラをつかまえて、雪でローラの顔をこすったのです。ローラは逃げようとしましたが、ガスは放してくれません。ガスはもう一度、ローラの顔を雪でこすろうとしました。ガスの指がローラの口のあたりに来たそのときです。ローラは思いっきりガスの親指を噛んだのです。 ガスは悲鳴をあげて、指をふりほどくと親指から真っ赤な血が流れ出ました。いとこのウィルは、ローラを見て,次にガスの親指をみていいました。
「ガス、これでローラのこと、かまうなってわかっただろ?」
ガスがどこの誰だかわかっていません。注釈は「ミステリー」となっています。

また、次のエピソードからは、ローラがどんな躾を受けていたのか、垣間見えます。
マーサおばさんの家のロフトでローラとメアリがいとこと遊んでいると、大騒ぎになりました。ウィルがナニーの髪の毛をひっぱったのでナニーが泣き出し、ローラがジョーの顔をひっかいたのでジョーがローラを追いかけまわし、 メアリとレッティがジョーを捕まえようとしたのです。するとマーサおばさんが、かあさんに言いました。

「上に行って子どもたち全員のおしりを叩いて来てちょうだい。そのあと私も行くから」

ウィルとジョーはお行儀が悪かった、ナニーは泣いたから、ローラはひっかいたから、メアリとレッティは騒ぎを大きくしたからと、かあさんが皆のおしりをたたくと、 静かになったのでマーサおばさんの出番はなかったそうです。

注釈者ヒルは、「読者はキャロラインの別の側面を見るだろう。「小さな家」シリーズのかあさんよりも、実在のキャロラインは躾にはかなり厳しかった」と書いています。
最近の北米では、手をあげるのはもちろん、おしりを叩くのさえ良くないとされているのでそう感じるのかもしれません。私の同僚にも、親に叩かれたことがないという人がけっこういます。
でも、昔はそれが普通で、かあさんの躾はとりたてて厳しくなかったのでは、と個人的には思います。

マーサの写真はこちらから

2015年1月30日金曜日

PGH 金髪と茶色の髪とロティおばさん

「大きな森の小さな家」では、インガルスが町に買い物にいく話があります。そのとき、ペピンの雑貨店のご主人は、メアリのきれいな金髪の髪を誉めたのに、ローラの髪は「汚い茶色」なので触れませんでした。
メアリがロティおばさんに金髪と茶色とどちらの髪が好きか訊ねたときも、茶色の髪のローラは、ロティおばさんが答えるまで、みじめな気持で待っていました。
 ロティおばさんが帰ったあと、木ぎれを集めているときに、茶色より金髪の方がきれいだといったため、メアリをひっぱたいたローラは、とうさんにおしおきされます。そして「とうさんの髪も茶色だよ」といってもらって、ようやく落ち着きを取り戻します。 ワイルダーは、「小さな家」シリーズのローラに、金髪コンプレックスを持たせています。

 でも、「パイオニア・ガール」では、メアリはロティおばさんに髪について訊ねません。木ぎれを拾っている時に髪の色のことでケンカして、とうさんにおしおきされる話はありますが、とうさんがローラを抱きながら「とうさんの髪も茶色だよ」というセリフもありません。その代わりローラを抱いたとうさんは、「とうさんと森の声のおはなし」をしてくれました。幼いとうさんが、牛を連れて帰るときに道草をくって暗い森で怖い思いをした話で、「大きな森の小さな家」では三章の「長いライフル銃」に描かれています。

ワイルダーはメアリをひっぱたいたケンカのエピソードを「小さな家」の出版前に、あるエッセイで詳細に描いています。この一件はかなりワイルダーの心を傷つけたようです。髪の色ではなく、両親がメアリの話だけきいて、自分の言い分を聞いてくれなかったことに対して。両親への不満も垣間見えるエッセイです。


インガルスの家へ遊びに来たロティおばさん、Charlotte E. Holbrook(1854-1939)は、キャロライン・インガルスの異父妹です。 キャロラインの父親は、彼女が幼いときに船の事故で死亡したため、キャロラインの母親は五年後に再婚しました。ロティは彼らの唯一の子どもでした。インガルスの家を訪問したときロティは十二歳でした。きっとローラやメアリに会いに来たのでしょう。ロティおばさんは、かあさんと近い年齢だと思っていたので、実年齢を知ったとき意外でした。






2015年1月29日木曜日

PGH ドーシアおばさんとルビイおばさん

「大きな森の小さな家」のじいちゃんのダンスパーティーでは、ドーシアおばさんとルビイおばさんが、パーティのために髪を結ったり、コルセットを締め上げる話があります。
そのルビイおばさんはチャールズ・インガルスの妹で、一八三八年に生まれ、結婚してまもなく二十五歳の若さでなくなりました。

ドーシアおばさんは一八六◯年代半ばに結婚して、レナとオーガスト・ユージン(出版作品ではジーンと呼ばれている)の二人の子どもをもうけました。けれども、息子が生まれてまもなくドーシアの夫は、彼らの家に入ろうとした人を射殺したため刑務所におくられました。そのためドーシアは離婚して実家に戻りました。(たしか、その後、再婚したと思いました)。

ジョージおじさんが南北戦争によって人が変わってしまい、雌牛を盗んで逮捕されたエピソードは、「パイオニア・ガール」のある版に含まれています。でも、ドーシアの離婚の話は、「小さな家」シリーズにも「パイオニア・ガール」にもありません。注釈者のヒルは、ワイルダーにとって、ドーシアの生き方は口に出すのがはばかられたのだろうと推測しています。
そして、「シルバーレイクの岸辺で」で、かあさんが「レナはいい子だけど気性が激しくて無鉄砲なのに、ドーシアは直してやらない」と述べているのを指摘して、ワイルダーがどのようにドーシアおばさんを見ていたのかヒントがあるとしています。

ドーシアおばさんの写真はこちらから




2015年1月28日水曜日

PGH ジョージおじさん

「大きな森の小さな家」のじいちゃんの家のダンスパーティーにはジョージおじさんが登場します。とうさんはジョージおじさんを「すっかりあら男になっちまったよ。戦争から帰って来てからな」と言っていました。でも、ローラはジョージおじさんがダンスの相手をしてくれたとき、気に入ってきました。ジョージおじさんは好意的に描かれていますが、「パイオニア・ガール」では、「嫌いだった」とはっきり述べています。

「大きな森の小さな家」では、おじさんは十四歳のときに鼓手になりたくて家出をしたとなっています。でも、史実と照らし合わせると、一八五一年七月生まれのジョージ・W・インガルスは、南北戦争の終結時、まだ十三歳でした。
軍隊でのジョージの足どりを正確につかむのは不可能ですが、十一歳になる直前の一八六二年七月にウィスコンシンの歩兵隊に志願していて、三ヶ月後の十月に脱走しています。歩兵隊に記録されているジョージのミドルネームや出身地は、ほんとうのものではなく、偽ったのかもしれません。
もしも十月に脱走したとしたら、彼はミズーリやアーカンソー周辺にいた可能性があり、戦争が終結するまで南軍の脱走兵と一緒に、家畜や小麦を盗んでいたとも考えられます。
下書きの「パイオニア・ガール」では、ジョージについてほとんど触れていませんが、ブランディット改訂版とバイ版では、戦争によってジョージは人が変わってしまい、雌牛を盗んで逮捕された、戦争が終わったのにわかっていない、という記述があります。

ジョージおじさんはジュリア・バードと結婚して、一九〇一年、四十九歳でウィスコンシンで亡くなりました。

荒くれだったようですが、なかなかのイケメンでした。写真はこちらから




2015年1月26日月曜日

PGH「パイオニアガール」の版

回想録「パイオニア・ガール」にはさまざまな版があるが、今回出版されたのはワイルダーによる手書きの下書き原稿である。はぎとり用紙六冊に鉛筆で書かれたもので、レインの手が加えられていないこともあり、これがいちばん事実に近いとされている。一人称で書かれ、大人の読者を対象に執筆されたノンフィクションだ。
ワイルダーは一九三十年五月にこれを書き上げてレインに渡した。添削してからタイプライターで打ち、出版社に送るよう期待していたと思われる。

「パイオニア・ガール」は何度も書き直されたので、いくつもの版がある。年代順に並べると、下書き原稿→ブランディット版→ブランディット改訂版→児童向け版→バイ版があり、下書き原稿以外はいずれもレインによる手が加えられている。ブランディット版とバイ版というのは、レインのエージェントだったカール・ブランディットとジョージ・バイの名前からつけられた。

児童向け版は、レインがブランディット版からウィスコンシンの話の部分のみを抜き出したものだ。児童向け版はレインがワイルダーに断りなく着手したもので、当初、ワイルダーはこの原稿の存在を知らされていなかった。レインは大人向けの「パイオニア・ガール」と、児童向けの「パイオニア・ガール」の原稿を準備していて、二本とも売り込もうと計画していたらしい。

「パイオニア・ガール」の下書き原稿は一人称で書かれた大人向けのノンフィクションだが、児童向け版は老婦人の視点で語られたフィクションである。この版は「おばあちゃんが小さな女の子だったころ」(When Grandma Was a Little Girl)というタイトルで知られている。一人称のノンフィクションから老婦人の語るフィクションへと変えたのは、レインだった。ワイルダーはこの児童向け版を発展させて「大きな森の小さな家」を完成させた。

大人向けの「パイオニア・ガール」も出版社を見つけられなかったが、「小さな家」シリーズの基になった。ワイルダーはさまざまなエピソードを発展させたり削除して「小さな家」シリーズを完成させた。レインのベストセラー「大草原物語」と「自由の大地」も、「パイオニア・ガール」をヒントに創作された。

今回出版された注釈付きの「パイオニア・ガール」は、下書き原稿に 注釈を加えたもの。その注釈では上記の各版との違いも扱っている。

このブログには、タイトルがPGまたはPGHで始まるページがある。PGはバイ版の「パイオニア・ガール」を扱っていて、注釈付き「パイオニア・ガール」が刊行される以前に、私がアーカイブから原稿を取り寄せて紹介したものだ。PGHで始まるページは、今回刊行された下書き原稿の「パイオニア・ガール」を扱っている。

なお二◯十五年以降、このブログのページで「パイオニア・ガール」と言う場合、下書き原稿を指す。他の版の「パイオニア・ガール」を指す場合はどの版か記すことにする。







2015年1月25日日曜日

PGH 注釈付き「パイオニア・ガール」の出版

去年の秋、ようやく注釈付きの「パイオニア・ガール」がアメリカで出版されました。「パイオニア・ガール」は以前からアメリカのファンの間で知られていて、アーカイブから取り寄せて読んでいる人たちも多く、さまざまな研究者が引用しています。このブログで以前に紹介した「パイオニア・ガール」も、アーカイブから取り寄せたものを使っています(PGと記されているページ)。
でも、今までファンが読んでいたのは、レインが添削した「パイオニア・ガール」です。今回出版されたのはワイルダーが執筆した下書き原稿で、レインの手は入っていません。

出版されたばかりの「パイオニア・ガール」が届いたとき、箱をあけてびっくりしました。アルバムくらいの大型本で、ズッシリするほど重く片手では持てません。さらにびっくりしたのは、注釈付きの読み物だと思っていたら、かなり詳細な研究書で、注釈が本文の何倍もあるのです。カンザスの話は全部で二十二ページありますが、そのうちの十八ページは注釈で、本文よりも小さな字でびっしり書いてあります。注釈を担当したパメラ・スミス・ヒルはこの本を「ワイルダー百科事典のようなもの」と言っていましたが、まさにそのとおりです。
熱心なファンの多いアメリカでは大好評で、たくさんのレビューを目にします。注文が多すぎて印刷がおいつかず、多くの人たちが心待ちにしているという記事が繰り返し報道されています。そんな記事を読むたびに、アメリカ人にとっての「小さな家」の重みを改めて感じます。

先日、日本の大学の先生が、「クラスで大草原の小さな家の話をしたら、三分の二の学生が知らなかった」とツイッターでつぶやいていました。「大草原の小さな家を知ってるといったら昭和だねといわれた」というツイッターもありました。このようなつぶやきをよく目にします。
 そんな日本で、「パイオニア・ガール」の邦訳が出るのかどうか気になるところですが、数少ないワイルダーファンのために、このブログでかいつまんでご紹介します。(ただし、いつまで続くかわかりません・・・・!)

「パイオニア・ガール」はカンザスの話から始まってローラの結婚で終りになります。ほんとうだったら「パイオニア・ガール」の順番どおり、カンザスの部分からブログに載せるべきですが、いろんな事情から、ウィスコンシンの話の途中からアップすることにします。順番も前後することがありまので、ご了承ください。