ローラ・インガルス・ワイルダーは「小さな家」シリーズを出版する以前に、回想録「パイオニア・ガール」を執筆しています。これはインディアン・テリトリーの暮らしからローラの結婚までを一人称で書いた大人向けのノンフィクションです。この原稿は出版できずに終わりました。このブログでは、その「パイオニア・ガール」を紹介しています。 ここでは二つの「パイオニア・ガール」を扱っています。一つはバイ版と呼ばれるもので娘のローズ・ワイルダー・レインが添削したものです。ページのタイトルがPGで始まっています。バイ版は出版されていません。 もう一つは下書き原稿の「パイオニア・ガール」で、2014年秋に注釈付きで出版されました。添削されていないため事実にいちばん近いと考えられています。ページのタイトルはPGHで始まっています。
注目の投稿
PGH キャップ&フローレンス・ガーランド DK12
ローラの学校の先生だったフローレンス・ガーランドは、1880年当時、18歳で、デ・スメットの公立学校の最初の教師でした。その学校は資材も労働も、町の人々のボランティアによってたてられたもので、先生の給料はひと月に20ドルでした。 フローレンスは1887年に材木商だったチャールズ...
2015年2月4日水曜日
PGH つららと罪の意識 MN
ミネソタへの移住の途中、インガルスとピーターおじさん一家は、しばらく空き家に滞在していました。そのときのローラの体験は「プラムクリークの土手で」のある創作エピソードの基になっています。
ある晩、寝つかれずにいたローラは、暗闇のなかでちらちら動く暖炉の火を眺めながら、とうさんのバイオリンの音色に耳をすましていると、忘れようとしていた大きな森の想い出が浮かんできました。
ある春先に、ローラは軒先のつららを壊して、落ちて来たつららを食べて遊んでいました。かあさんに「もういいかげんにしなさい」といわれたのでやめたのですが、ひとつだけ、とってもおいしそうなのがありました。つい誘惑に負けたローラは、とっさに口に入れて、何食わぬ顔で家に入りました。怪しんだかあさんは、「つららを食べているの?」と聞きましたが、ローラはゴクリと飲み込んで、「う、ううん」と答えました。人生初のウソでした。お腹に入ったつららは、ものすごく冷たかったそうです。
ウソを信じたかあさんを見て、ローラは罪の意識にさいなまれ、その日はおとなしくしていましたが、翌日になるとすっかり忘れてしまいました。
ところが、その晩、罪の意識が戻って来たのです。とうさんのバイオリンの音色も、クリークのせせらぎも、暖炉の火も、何もかも美しいのに、ローラだけが嘘つきで仲間はずれでした。のどが詰まり、胸が苦しくなって、ローラはとうとう泣き出してしまいました。急いでベッドに来てくれたかあさんに何もかも話してしまうと、ローラは気持が楽になり、神さまにお祈りをしてから眠りにつきました。
このエピソードは「プラムクリークの土手で」の、「きみょうな動物」の章を思い起こさせます。とうさんとの約束をやぶって、クリークへ行こうとしたローラが罪の意識にさいなまれ、告白するくだりです。この二つのエピソードはとてもよく似ています。
「きみょうな動物」の章のエピソードは創作です。でも、「ワイルダーの実体験や感情から引き出されたもので、それに手を加えることによって深みを与えている」とヒルは記しています。
ただし、ワイルダーがきみょうな動物にあったのは事実です。でも、そのときはかあさんと一緒でした。「小さな家」のかあさんだったら、見たこともない動物 に出あったら手を出さないと思いますけど、「パイオニアガール」のかあさんは、棒でつっついていました。何かイメージが違って笑っちゃいます。